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第35回 関ケ原の合戦で大名生き残りの秘策、親子、兄弟が敵味方に分かれて参陣

NHK大河ドラマ「真田丸」第35回では、関ケ原の合戦を目前に控え、真田家が2つに割れる犬伏の別れが描かれました。父の昌幸と次男幸村(信繁)は石田三成を中心とした西軍、長男の信之は徳川家康率いる東軍に加わることになりました。どちらが勝っても真田家が生き残る秘策ですが、関ケ原の合戦で家中を2分して両陣営に参陣した例は真田家だけではありません。自家の生き残りを第1に考える戦国大名の苦渋の決断が、そこに隠されているのです。

前田家は兄が東軍、弟が西軍に

加賀(今の石川県南部)の前田家は、当主の前田利長が東軍に加わり、西軍についた加賀大聖寺城の山口宗永、小松城の丹羽長重らと交戦しました。しかし、利長の弟で分家の前田利政は出陣せず、戦後に能登(石川県北部)の所領を没収されています。

前田家は利長、利政の父利家が五大老の一角を占め、豊臣秀吉の死後、家康と三成を中心に発生した豊臣政権内の対立を調停する役割を果たしていました。しかし、利家が秀吉のあとを追うように死去すると、家康暗殺計画の疑いが利長にかけられます。

利長は利家の後を継いで五大老の一角に座っていましたが、実母のまつを家康へ人質に出し、疑いを晴らしました。五大老筆頭で圧倒的な軍事力を持つ家康に事実上、屈服した形となったのです。東軍への参加もそれが影響したと考えられています。

利政が家康に従わなかった理由については諸説ありますが、妻子が三成の人質になっていたことや家康に対する反発から、三成と気脈を通じていたとする見方が出ています。所領の没収は家康から西軍に与したと判断されたためでしょう。

利政の所領は北陸で東軍として働いた兄の利長に与えられ、前田本家は加賀、能登、越中(富山県)を治める120万石の大大名になりました。利政は京都で隠居暮らしし、大阪の陣でも東西両軍から誘いを受けながら中立を保っています。

蜂須賀家は親子が東西両軍に分裂

阿波(徳島県)の蜂須賀家は当主の家政が西軍に加わり、2,000人の兵を預けました。しかし、自身は病気を理由に積極的に行動せず、領国の阿波を豊臣家に返上、頭を丸めて高野山に上りました。

その代わり、嫡男の至鎮は軍勢を率いて会津討伐に参加、関ケ原の合戦でも東軍に加わって戦功を挙げています。戦後、蜂須賀家は至鎮が家康から阿波一国の領地を安堵され、淡路(兵庫県淡路島)の加増を受けました。

家政は秀吉の部下として活躍した蜂須賀正勝(小六)の嫡男で、織田信長の時代から秀吉と行動をともにしてきた豊臣恩顧の大名です。しかし、至鎮の正室に家康の養女をめとったほか、加藤清正、黒田長政らと三成襲撃事件を起こすなど親家康、反三成の立場を鮮明にしていました。

豊臣家の恩と三成憎しの感情で苦悩した末、東西両陣営に軍を出し、蜂須賀家の安泰を図ったものとみられています。

九鬼家は親子が一戦交える

親子が東西に分かれて一戦を交えたのは、志摩(三重県志摩地方)の九鬼家です。九鬼家は信長、秀吉に仕えた大名で、水軍で有名。秀吉の戦の多くに水軍として参加し、海賊大名の異名を受けていました。

当主の九鬼守隆は会津討伐に加わっていましたが、三成の挙兵を聞き、急きょ志摩へ戻ります。西軍の氏家行広らが守る桑名城を攻略し、東軍最初の勝報を挙げました。

これに対し、守隆の父嘉隆は三成の誘いを受け、西軍に参加していました。娘婿の堀内氏善とともに、九鬼氏の本拠鳥羽城を占拠します。このため、守隆と城外で合戦になりました。しかし、決着がつかないうちに、関ケ原の合戦が終わり、嘉隆は城を退去します。

守隆は桑名城の戦いが認められ、所領を安堵されました。さらに、嘉隆の助命を家康に願い出て、許されましたが、助命の知らせが伝わる前に嘉隆が逃亡先の答志島で自刃してしまいます。

中立的立場の大名は対応に苦慮

このほか、陸奥(東北地方)の津軽家、肥前(佐賀、長崎両県)の鍋島家、讃岐(香川県)の生駒家なども親子、兄弟が東西両軍に分かれました。

関ケ原の合戦は家康と三成が激突した本戦だけでなく、全国の大名が東西両陣営に分かれて各地で戦闘を繰り返しました。両軍の勢力はほぼ互角とみられ、戦前に勝敗の行方を見分けられませんでした。

家康と関係が深かったり、三成を嫌っていたりした大名は東軍、家康に反感を持つ大名は西軍につきましたが、中立的な立場や三成を憎みながらも豊臣家に恩義を感じる大名は、対応に苦慮していたのです。

敗軍についたのでは家は断絶してしまいます。このため、大名の中には両陣営に軍を派遣し、どちらが勝っても生き残ろうと考えるところが相次ぎました。他の大名家からは二股膏薬などと批判を受けましたが、やむにやまれぬ苦肉の策だったわけです。



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