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第29回 急速に広がったキリスト教、桃山時代のキリシタン大名は誰?

NHK大河ドラマ「真田丸」第29回で、長澤まさみさんが扮するきりが、木製の十字架を細川忠興の妻ガラシャに手渡すシーンがありました。戦国時代から安土桃山時代にかけ、日本ではキリスト教が広く信仰されるようになりました。初めは外国人の宣教師が多い九州が中心でしたが、織田信長が布教を保護したあとは、全国に信者が広がっています。有力大名にも信者は多く、キリシタン大名と呼ばれていました。どんな大名がキリスト教を信仰していたのでしょうか。

鉄砲欲しさに九州の大名が次々に入信

日本にキリスト教を伝えたのは、カトリックの宣教師・フランシスコ・ザビエルです。ザビエルは今のスペイン北部にあったナバラ王国生まれのバスク人で、イエズス会に所属していました。ポルトガル王ジョアン3世の依頼でインドのゴアに派遣され、1549(天文18)年に日本へキリスト教を伝えたのです。

ザビエルは中国を経由し、薩摩(今の鹿児島県西部)に上陸します。まず領地を治める戦国大名に布教の許可を求め、さらに布教を円滑に進めるため大名自身にも布教を進めていきました。

ザビエルに続き、多くの宣教師が続々と来日します。彼らは九州を中心に多くの教会を建て、信者を獲得していきました。主な宣教師に「日本史」を執筆したルイス・フロイス、京都を中心に布教したグネッキ・オルガンティノ、ザビエルの後を継いだコスメ・デ・トーレスらがいます。

同行した商人は大名と南蛮貿易をする一方、鉄砲や大砲を販売しました。地球儀やメガネ、パンなどもこの時代に西洋から伝わっています。主な輸入品は武器のほか、中国産の硝石、生糸、絹織物など。これに対し、日本の輸出品は主に銀と奴隷でした。

戦国大名たちの中にはこれらの武器弾薬、貿易品を得るため、積極的に入信する者も出てきました。鉄砲を得るために、征服した大名の家臣、領民を奴隷として売り飛ばす者もいたのです。

九州では豊後(大分県)の大友宗麟、肥前(長崎、佐賀県)の大村純忠、有馬義貞、宇久純尭らがおり、大名の家族や家臣にも多くの信者がいました。

信長、秀吉の有力武将も相次いでキリシタンに

全国にキリシタンが広がるきっかけを作ったのは織田信長でした。信長は近江(滋賀県)の比叡山、摂津(大阪府北部、兵庫県東部)の石山本願寺など宗教勢力と対立していました。これらの寺院では僧侶が武器を取り、戦国大名に匹敵する武力を持っていたのです。

信長は目新しいことに敏感で、南蛮貿易の利益に目をつけていましたが、宗教勢力と対抗するため、キリスト教を布教させ、宗教勢力に入る信者を減らそうという思惑もあったのではないかとみられています。

信長自身がキリスト教に帰依したわけではありませんが、織田家の家中には多くのキリシタン武将が誕生しました。豊臣秀吉の軍師を務めた黒田孝高、摂津の高山右近、近江の蒲生氏郷らが有名です。前田利家や蜂須賀家政にもキリシタン説が出ています。

秀吉の時代になると、さらにキリシタン武将は増えました。信長の孫の織田秀信、近江の京極高次、肥後(熊本県)の小西行長、大和(奈良県)の筒井定次、近江の田中吉政らが知られています。

武将の家族にも数多くの信者が出てきました。宇喜多秀家正室で前田利家の娘豪姫、細川忠興正室で明智光秀の娘ガラシャ、京極高次正室で浅井長政の娘初、徳川家康の六男・松平忠輝の正室で、伊達政宗の娘五郎八姫らです。

江戸に徳川幕府ができた直後、日本の人口は1200万人から2200万人と推定されています。1605(慶長10)年のカトリック信徒数は75万人に達したという記録があります。現在、日本のキリスト教徒は全人口の1%といわれていますから、それをはるかに上回る比率のキリシタンがいたことになります。

幕府の支配体制と対立、ついに禁教令布告

しかし、神の前で平等というキリスト教の思想はやがて封建社会の支配者と対立するようになります。秀吉は1587(天正15)年、宣教師の追放令を発しました。ただ、この時点では庶民の信仰や外国商人との取引を制限することはありませんでした。

その後、1596(文禄5)年に禁教令が出て、フランシスコ会の教徒らが処刑される出来事がありました。ただ、このときも信徒に対し強制改宗や大きな迫害はなかったのです。

江戸幕府が成立したあと、徳川家康も当初、キリシタンに厳しい弾圧を加えず、フランシスコ会に東北地方への布教を認めるなど黙認の形を取っていました。しかし、キリシタンの中に幕府の支配体制に組み込まれるのを拒む動きが相次いだことから、1612(慶長17)年に幕府直轄地に禁教令を布告しました。

禁教令は翌年、全国に広げられます。教会の破壊、布教の禁止を柱にしたもので、キリシタン武将は改易処分にされました。キリスト教を信仰する庶民はこのあと、隠れキリシタンとなり、地下へ潜って信仰を守り続けることになるのです。



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